ddPCRで使われる蛍光プローブとは?蛍光が出る仕組みをわかりやすく解説

遺伝子検査

ddPCRでは、約2万個のドロップレットの中でPCR反応が行われます。

しかし、PCRでDNAが増幅されても、それだけではどのドロップレットで増幅が起こったのかを見分けることはできません。

そこで活躍するのが蛍光標識プローブです。

この記事では、

  • 蛍光プローブとは何か
  • なぜ光るのか
  • ddPCRでどのように利用されているのか

を初心者向けにわかりやすく解説します。

結論:蛍光プローブとはDNAが増幅されたことを蛍光で知らせる目印

通常のPCRでは、プライマーだけでDNAを増幅できます。

一方、ddPCRやリアルタイムPCRでは、増幅したDNAを検出するために蛍光標識プローブを追加します。

「プローブ(Probe)」には、「探針(たんしん)」や「目印」という意味があります。

蛍光標識プローブは、目的のDNAが増幅されたことを光で知らせる目印です。

PCRで目的DNAが増幅されると、プローブが切断されて蛍光を発します。
これにより、装置は**「どのドロップレットでDNAが増幅されたのか」**を判定できます。

蛍光プローブとは?

PCRで使われるプローブは、目的のDNA配列だけに結合するよう設計された短い一本鎖DNAです。

プローブは次の3つの部分からできています。

  • Reporter(蛍光色素)…光を出す色素
  • Quencher(消光色素)…Reporterの光を打ち消す色素
  • 標的DNAに結合する短いDNA配列

プライマーがDNA合成を始める「スタート地点」であるのに対し、プローブは目的のDNA配列を見つける「目印(センサー)」として働きます。

プライマーは増幅領域の両端に結合しますが、プローブはその中央付近に結合するよう設計されています。

よく試薬名に「Primer/probe」と書かれていることがありますが、これはプライマーとプローブがくっついているという意味ではありません。

それぞれが独立した試薬として入っていることを意味しています。

私はこの2つがくっついているんだと勘違いしていましたが…

なぜプローブは最初は光らないの?プローブの仕組み

プローブには、

  • Reporter(蛍光色素)
  • Quencher(消光色素)

が付いています。

この2つが近くにある間は、Reporterが出そうとする光はQuencherによって打ち消されます。

イメージすると、

💡 Reporter「光りたい!」
🛑 Quencher「まだダメ!」

結果

🌑 まだ光らない

という状態です。

そのため、PCRが始まる前や、プローブが切断される前は蛍光は観測されません。

PCRが始まると何が起こる?

では、ここからは蛍光標識プローブがどのように光るのかを順番に解説します。

PCRでは、Taq DNAポリメラーゼがプライマーの3’末端からDNAを5’→3’方向へ伸長します。

DNA合成が進むと、Taq DNAポリメラーゼは途中でプローブに到達します。

プローブが切断されると蛍光が出る

Taq DNAポリメラーゼには5’→3’エキソヌクレアーゼ活性(プローブを切断する働き)があり、DNAを伸長しながらプローブを切断します。

プローブが切断されると、ReporterとQuencherが離れます。

ReporterがQuencherから離れることで、光が打ち消されなくなり、レーザーを照射したときに蛍光を発するようになります。

このとき、DNA合成は止まることなく、そのまま続きます。

Taq DNAポリメラーゼを重機だとすると、蛍光プローブは中に光る風船が入ったカプセルのようなイメージです。
重機によってカプセルが壊されると、風船が外に出て光って見えるようになります。

ちなみに、ddPCRをやったときに「そういえばDNAポリメラーゼなんて入れたっけ?」と思ったのですが、DNAポリメラーゼはSupermixに含まれています。

そのため、実際の実験ではDNAポリメラーゼを単独で加えていなくても、Supermixに含まれるDNAポリメラーゼによってDNAの増幅が行われています。

使用されているDNAポリメラーゼの種類や仕様は製品によって異なるため、詳細については各製品のメーカー情報を確認する必要があります。

光るドロップレット=DNAが存在した

ddPCRでは、PCR終了後に約2万個のドロップレットを1個ずつレーザーで読み取ります。

すると、それぞれのドロップレットは

  • 光ったドロップレット=DNAが存在した(陽性)
  • 光らなかったドロップレット=DNAが存在しなかった(陰性)

の2種類に分類されます。

つまり、ddPCRはDNAそのものを直接見ているのではなく、ドロップレットごとの蛍光を読み取り、その蛍光をDNAの存在の指標として利用しています。

そして、陽性(光った)ドロップレットの割合からDNA量を計算し、絶対定量しています。

FAMとHEXとは?

ddPCRでは、1種類だけでなく、異なる色の蛍光を利用することで、1つのドロップレット内で複数の遺伝子を同時に解析できます。

代表的な蛍光色素がFAMHEXです。

※内部対照遺伝子とは、DNAが正しく検出できているかを確認したり、比較の基準として使われたりする遺伝子です。

初心者向けに言えば、「その細胞にはちゃんとDNAが入っていますよ」と確認するための目印だと思えばイメージしやすいでしょう。

2色同時測定のイメージ

目的遺伝子(FAM)と内部対象遺伝子(HEX)を測定すると、1つのドロップレットは次の4種類に分類されます。

これが、ddPCR解析ソフトで表示される4つのクラスターの正体です。
※詳細は別の記事で解説します。

まとめ

蛍光標識プローブは、DNAが増幅されたことを光で知らせる目印です。

ポイントをまとめると、

  • プローブは目的のDNA配列だけに結合する
  • ReporterとQuencherが近い間は蛍光は出ない
  • Taq DNAポリメラーゼがDNAを伸長しながらプローブを切断する
  • ReporterとQuencherが離れることで蛍光が発生する
  • 光ったドロップレットを陽性として数えることでDNA量を定量する
  • FAMとHEXを使えば2種類の遺伝子を同時に測定できる

蛍光プローブがあることで、ddPCRはDNAを直接見ることなく、「蛍光の有無」だけでDNA量を高精度に絶対定量できます。

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