フローサイトメトリー(FACS)を扱っていると、
「CD19って何の細胞だっけ?」
「CD45RAとCD45RO、どっちがナイーブ?」
「CD62Lって何を見るマーカー?」
など、たくさんのCDマーカーが登場します。
一つひとつ調べるのは大変なので、フローサイトメトリーでよく登場する代表的なマーカーを、すぐ確認できるカンペとして一覧にまとめました。
なお、この表は各マーカーの特徴をざっくり確認するためのものです。
実際のフローサイトメトリーでは、1種類のマーカーだけで細胞集団や疾患を判断するのではなく、複数のマーカーを組み合わせて評価します。
CDマーカー・抗体一覧
| マーカー | 主に何を見る? | 覚え方・ポイント | 関連する疾患・臨床での例 |
|---|---|---|---|
| CD3 | T細胞 | T細胞の代表的マーカー | T細胞系免疫不全、T-ALLなど |
| CD4 | ヘルパーT細胞など | ヘルパーT細胞 | HIV感染症、免疫不全症など |
| CD8 | 細胞傷害性T細胞など | キラーT細胞 | ウイルス感染、免疫不全症など |
| CD11b | 単球、顆粒球、NK細胞など | 骨髄系・自然免疫 | AMLなどの免疫表現型解析 |
| CD14 | 主に単球 | 単球 | AMLの単球系分化の評価など |
| CD15 | 主に顆粒球系細胞 | 顆粒球系 | AMLなどの免疫表現型解析 |
| CD16 | NK細胞、好中球、一部の単球 | NK・単球 | NK細胞などのサブセット解析 |
| CD19 | B細胞 | B細胞の代表的マーカー | B-ALL、B細胞性リンパ腫、免疫不全症など |
| CD20 | B細胞 | B細胞・リツキシマブの標的 | B細胞性リンパ腫、B細胞除去療法など |
| CD25 | 活性化T細胞、Tregなど | IL-2受容体α鎖 | ATL、Treg解析など |
| CD27 | T細胞、B細胞など | 分化・メモリー | CVIDなどでのB細胞サブセット解析 |
| CD33 | 骨髄系細胞 | 骨髄系 | AMLなど |
| CD34 | 造血幹・前駆細胞、芽球など | 若い造血細胞 | 急性白血病、造血幹細胞移植など |
| CD38 | 形質細胞、活性化リンパ球など | 活性化・形質細胞 | 多発性骨髄腫など |
| CD45 | ほぼすべての白血球 | 白血球全般 | 白血病・リンパ腫などの解析 |
| CD45RA | ナイーブT細胞など | ナイーブでよく見る | T細胞分化、免疫再構築など |
| CD45RO | メモリーT細胞など | メモリーでよく見る | T細胞分化・免疫状態の評価 |
| CD56 | NK細胞など | NK細胞 | NK細胞解析、NK/T細胞リンパ腫など |
| CD57 | NK細胞、一部のT細胞など | 分化・成熟したリンパ球 | NK/T細胞サブセット解析など |
| CD62L | ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞など | L-セレクチン。リンパ節へのホーミングに関与 | T細胞分化・免疫再構築など |
| CD127 | IL-7受容体α鎖 | Tregでは低発現 | Treg、免疫異常の解析など |
| CD132 | 共通γ鎖(γc) | 複数のサイトカイン受容体に共通 | X連鎖SCID(IL2RG異常) |
| CCR7※ | ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞など | リンパ節へのホーミングに重要 | T細胞分化・免疫再構築など |
| IgD※ | 主にナイーブB細胞など | B細胞の成熟・分化を見る | B細胞サブセット、免疫不全症など |
| HLA-DR※ | B細胞、単球、活性化T細胞など | 抗原提示・活性化 | 白血病や免疫活性化状態など |
| FOXP3※ | Tregに重要な核内転写因子 | Treg | IPEX症候群など |
| CTLA-4※ | T細胞の活性化を抑制する分子 | 免疫のブレーキ | CTLA-4ハプロ不全など |
※CCR7、IgD、HLA-DR、FOXP3、CTLA-4はCD番号ではありませんが、フローサイトメトリーで一緒に使用されることがあるため掲載しています。
T細胞の分化を見るマーカー
CD45RA、CD45RO、CD62L、CCR7、CD27などは、T細胞の分化状態を調べるときに使われるマーカーです。
ざっくり覚えるなら、
- CD45RA:ナイーブT細胞などで発現
- CD45RO:メモリーT細胞などで発現
- CD62L:リンパ節へのホーミングに関与
- CCR7:リンパ節へのホーミングに重要
- CD27:T細胞の分化状態を見るときにも使われる
というイメージです。
ただし、CD45RA陽性=必ずナイーブT細胞、CD45RO陽性=必ずメモリーT細胞、と単純に判断できるわけではありません。
例えば、分化したエフェクターメモリーT細胞の中には、CD45RAを再発現する**TEMRA(terminally differentiated effector memory cells re-expressing CD45RA)**と呼ばれる集団があります。
そのため、実際の解析ではCD45RAやCD45ROだけを見るのではなく、CD62L、CCR7、CD27など複数のマーカーを組み合わせて評価します。
B細胞の分化を見るマーカー
B細胞では、CD19やCD20に加えて、CD27やIgDなどを組み合わせることで、B細胞の分化状態をさらに細かく評価できます。
例えば、
- ナイーブB細胞:CD19⁺ CD27⁻ IgD⁺
- メモリーB細胞:CD19⁺ CD27⁺を含む集団
などがあります。
ただし、メモリーB細胞にもIgDを発現する集団と発現しない集団があるため、実際にはCD27、IgD、IgMなど複数のマーカーを組み合わせて分類します。
CD25・CD127・FOXP3とTreg
制御性T細胞(Treg)の解析では、CD25だけで判断することはできません。
CD25はIL-2受容体α鎖で、Tregで高発現しますが、活性化した通常のT細胞でも発現が上昇します。
そのため、表面マーカーでは、
CD4⁺ CD25high CD127low/−
などの組み合わせがTregの同定に用いられます。
また、Tregに重要な転写因子であるFOXP3も代表的なマーカーです。
ただし、FOXP3は細胞表面ではなく核内に存在する転写因子です。そのため、フローサイトメトリーで検出する場合は、表面マーカーとは異なり、固定・透過処理を行ったうえで細胞内染色を行う必要があります。
「CDマーカー=病気のマーカー」ではない
注意したいのは、多くのCDマーカーは特定の病気だけを示すものではないということです。
例えば、CD19はB細胞を同定する代表的なマーカーですが、
「CD19陽性だからB細胞性白血病」
という意味ではありません。
同じマーカーでも複数の細胞に発現することがあります。また、細胞の分化や活性化によって発現量が変化することもあります。
実際のフローサイトメトリーでは、複数のマーカーの発現パターンを組み合わせて細胞集団を評価します。
このページの「関連する疾患・臨床での例」も、そのマーカーが解析に登場する代表例であり、そのマーカーが陽性だから特定の疾患を意味するわけではありません。
まとめ
フローサイトメトリーでは、非常に多くのマーカーが登場します。
最初からすべて暗記するより、
CD3 → T細胞
CD19 → B細胞
CD56 → NK細胞
CD14 → 単球
CD34 → 造血幹・前駆細胞
CD45RA → ナイーブT細胞など
CD45RO → メモリーT細胞など
というように、まずは代表的な特徴から覚えると理解しやすくなります。
そして、慣れてきたらCD27、CD62L、CCR7、IgDなどを組み合わせて、細胞の分化状態やサブセットまで見ていくと、フローサイトメトリーの結果が少しずつ読みやすくなってきます。
「あのマーカー、何を見るんだっけ?」となったときに、すぐ確認できるカンペとして活用してください。
