第8回:大人になって突然アレルギーになる理由|子どもと大人のランキング比較

やさしい免疫学

「昨日までエビを普通に食べていたのに、突然アレルギーになった」

「子どもの頃は平気だったのに、大人になって花粉症になった」

こうした話は珍しくありません。

実はアレルギーは、子どもと大人で種類が大きく違います。

そしてもう一つ、意外な事実があります。

日本人で最も多いアレルギーは、実は花粉症ではありません。

今日は、

  • 子どもに多いアレルギー
  • 大人に多いアレルギー
  • なぜ大人になって突然発症するのか

を免疫の仕組みから整理してみましょう。

■ 実は日本人で一番多いアレルギー

それは

ダニアレルギー

です。

ダニは

  • 布団
  • カーペット
  • ソファ
  • カーテン

など、家の中のあらゆる場所にいます。

日本では、人口の約半分がダニに感作されていると言われています。

つまり、多くの人が
ダニに対するIgE抗体をすでに持っている可能性があるのです。

ただし、臨床的に症状として最も多いアレルギー疾患は花粉症です。

つまり

  • 感作で最も多いのがダニ
  • 症状として最も多いのが花粉症

と理解しておくとよいでしょう。

ダニは一年中存在するため、通年性アレルゲンとして知られています。
ダニの舌下免疫療法が通年で行えるのも、このためです。

■ 子どもに多いアレルギーランキング

(乳幼児〜学童)

1位 卵
2位 牛乳
3位 小麦
4位 ピーナッツ
5位 大豆

特徴

  • 食物アレルギーが中心
  • 成長とともに治ることが多い

これは消化管免疫が未熟なことが関係しています。

■ 大人に多いアレルギーランキング

(成人)

1位 花粉症
2位 甲殻類(エビ・カニ)
3位 果物(口腔アレルギー症候群)
4位 ナッツ類
5位 猫・犬アレルギー

特徴

  • 吸入アレルゲンが増える
  • 大人になって発症する

※なお、これらのランキングは研究や地域、年代によって順位が異なることがあります。

特に成人では、「ナッツ類」と「犬・猫アレルギー」の順位が前後するという報告もあり、
ここではあくまで目安として紹介しています。

成人では、食物アレルギーだけでなく、
花粉やダニ、動物などの吸入アレルゲンによるアレルギーが増えることが特徴です。

ただし、花粉症については近年、発症年齢が低年齢化する傾向も指摘されています。

■ なぜ大人になって突然発症するのか

アレルギーは2段階で起こります。

①感作;体が抗原を覚える
②発症;IgE抗体が反応する

多くの場合、子どもの頃から少しずつ感作が進んでいます。

そして、ある日

IgE抗体が閾値を超える

と症状が出ます。

つまりアレルギーは突然できるのではなく、突然表面化するのです。

■ 甲殻類アレルギーが大人に多い理由

エビやカニの原因タンパクは

トロポミオシン

です。

このタンパクは

  • ダニ
  • ゴキブリ

にも存在します。

そのためダニアレルギーの人は,
エビなどの甲殻類アレルギーを発症しやすいことが知られています。

これを交差反応といいます。

交差反応とは、

本来は別のたんぱく質であるにもかかわらず、
構造(エピトープ)が似ているため、同じ抗体が反応してしまう現象

のことです。

■ 花粉症と果物アレルギーの関係

花粉症の人が

  • リンゴ
  • モモ
  • キウイ

を食べると、口がかゆくなることがあります。

これは

花粉—食物アレルギー症候群

です。

花粉と果物のタンパクが似ているため起こります。

これも交差反応です。

■ なぜ猫アレルギーが後から出るのか

猫アレルギーの原因物質はFel d 1というタンパクです。

これは

  • 猫の唾液
  • 皮脂
  • フケ

などに含まれています。

猫と長く暮らしていると、少量のアレルゲンに長期間さらされることになります。

すると体内ではIgE抗体が少しずつ増えていき、
ある日、反応の閾値(しきいち)を超えたときに、アレルギー症状が出ることがあります。

この「閾値」とはアレルギー反応が起こるボーダーラインのようなものです。

例えば

  • IgE抗体の量
  • 抗原の量
  • 体調
  • ストレス

などが重なり、

一定のラインを超えたときに、アレルギー症状が現れます。

余談ですが「threshold」という言葉はもともと、「家の入り口の敷居」という意味です。
つまり敷居をまたぐと次の状態に入るというイメージから、
「閾値」という概念が使われています。

■ 久しぶりに触ったらアレルギーになる理由

もう一つの理由が免疫寛容(免疫トレランス)の破綻です。

人の免疫は、長く触れているものを「危険ではない」と学習することがあります。

これを免疫寛容といいます。

しかし長期間接触がなくなると、この耐性が弱まり、再び触れたときに

アレルギーとして反応することがあります。

■ 腸内環境も影響する

最近の研究では

  • 腸内細菌
  • 食生活
  • 抗生物質
  • ストレス
  • 加齢

などが

免疫バランス(Th1 / Th2)を変化させることが分かってきました。

その結果大人になってからアレルギー体質になるケースもあります。

■ アレルギーマーチとは?

アレルギーには興味深い特徴があります。

それは

1つのアレルギーを持つと、別のアレルギーを発症しやすい

ということです。

このアレルギーが次々と現れていく流れを、

アレルギーマーチ(Allergic March)と呼びます。

「マーチ(行進)」という名前の通り、

アレルギーが年齢とともに形を変えて現れる現象です。

■ アレルギーマーチの典型的な流れ

多くの場合、次のような順番で進みます。

  • 乳児期:食物アレルギー、アトピー性皮膚炎
  • 幼児期:気管支喘息
  • 学童期〜成人:花粉症・アレルギー性鼻炎

このように

皮膚 → 呼吸器 → 鼻

と症状の場所が変わっていくことが多いのです。

■ なぜアレルギーが増えていくのか

理由の一つはIgE抗体です。

アレルギー体質の人は
IgE抗体を作りやすい体質(アトピー体質)を持っています。

そのため、一度アレルギーが起こると

  • 花粉
  • ダニ
  • 食物
  • ペット

など

別の抗原にも反応しやすくなるのです。

■ 皮膚が重要な理由(最近の研究)

最近の研究では皮膚バリアの破綻がアレルギーの始まりになる可能性が指摘されています。

例えばアトピー性皮膚炎で皮膚のバリアが壊れると、

皮膚から

  • ダニ
  • 花粉
  • 食物タンパク

などが侵入します。

これによって免疫が感作される可能性があるのです。

これを経皮感作と呼びます。

■ すべての人が進むわけではない

ただし、アレルギーマーチは必ず起こるわけではありません。

例えば

  • 食物アレルギーだけで終わる人
  • 花粉症だけの人

もたくさんいます。

つまり、アレルギーマーチは、起こりやすい傾向を示した概念です。

■大人のアレルギーが治りにくい理由

大人発症のアレルギーは、子どもの食物アレルギーより自然に治りにくい傾向があります。
その理由は、単にIgE抗体が多いからではありません。

長期間の感作によって

  • メモリーB細胞
  • 長寿命形質細胞

などの免疫記憶が固定されることや、
ダニや花粉など日常的なアレルゲン曝露が続くことが関係しています。

そのため、自然に寛解することは子どもの食物アレルギーより少ないと考えられています。

アレルギー治療の基本は

1️⃣ 回避
2️⃣ 対症療法
3️⃣ 免疫療法(体質改善)

であり、舌下免疫療法は体質改善を目指す数少ない根本治療とされています。

■まとめ

アレルギーは、子どもと大人で種類が大きく変わります。

子どもに多いもの

  • 牛乳
  • 小麦

大人に多いもの

  • 花粉症
  • 甲殻類
  • 果物アレルギー

そして

大人のアレルギーは突然できるわけではありません。

子どもの頃から少しずつ感作が進み、IgE抗体が蓄積し、

反応の閾値を超えたとき、症状として現れます。

つまり「突然アレルギーになった」ように見えても
体の中では長い準備が進んでいる
ということなのです。

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