【結論:PCRとは、少量のDNAを大量にコピーする技術】
PCRとは、少量の特定DNAを、短時間で大量に増幅し、解析できる量にする技術です。
PCRは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略です。
PCRでは、DNAと必要な試薬を専用チューブに入れ、
サーマルサイクラーという装置で温度変化を繰り返しながらDNAを増幅します。
すると、目的のDNA領域だけを大量に増やせます。
イメージとしては、
「目的のDNAだけをコピーする技術」
と考えると分かりやすいです。
現在では、
- 感染症検査
- 遺伝子検査
- がん研究
- 法医学(DNA鑑定)
- 生物種の同定
など、さまざまな分野で使われています。
PCRはコロナ検査専用ではない
2020年の新型コロナウイルス流行により、「PCR」という言葉は一気に有名になりました。
しかしPCRは「感染症専用の検査」ではありません。
もともとは研究や医療の現場で広く使われている、DNAを増幅するための基本技術です。
現在では、
- 遺伝子変異の解析
- がん関連遺伝子の検査
- DNA鑑定
- 生物種の判定
など、非常に幅広い場面で使われています。
新型コロナウイルス検査でもPCRが使われた
例えば、新型コロナウイルス検査では、鼻や咽頭のぬぐい液からウイルス遺伝子を取り出して検査していました。
ただし、新型コロナウイルスは「RNAウイルス」です。
そのため実際には、
- ウイルスRNAを取り出す
- RNAをDNAに変換する(逆転写)
- 変換したDNAをPCRで増幅する
という流れで検査を行います。
このような方法を、RT-PCR(Reverse Transcription PCR:逆転写PCR)と呼びます。
PCRの前にはDNAやRNAを抽出する
PCRでは、まず細胞や血液などから核酸を取り出します。
DNAを調べる場合はDNA抽出を行い、RNAウイルスを調べる場合はRNA抽出を行います。
例えば、新型コロナウイルスはRNAウイルスのため、検体からRNAを取り出した後、
逆転写によってDNA(cDNA)に変換してからPCRを行います。
このPCRに使用する元のDNAを、テンプレートDNAと呼びます。
テンプレートの質が悪いと、
- 増幅できない
- ノイズが増える
- 配列解析が失敗する
ことがあります。
そのため、抽出工程はPCRの成功率を左右する重要なステップです。
PCRで何ができる?
DNAは量が少ないと、そのままでは解析できないことがあります。
そこでPCRを使い、目的のDNAを増幅することで、
- 特定の遺伝子変異の検出
- ウイルス遺伝子の検出
など、さまざまな解析が行われています。
PCRの特徴は、
「狙ったDNAだけを選んで増やせる」
ことです。
このとき重要になるのが、プライマーです。
プライマーは、「どのDNAを増やすか」を決める目印のような役割をしています。
そのため、PCRではプライマー設計が非常に重要になります。
PCRの仕組み
PCRでは、
- DNAをほどく
- プライマーを結合させる
- DNAを伸ばす
という3つの反応を繰り返します。
具体的には、
① 変性(Denaturation)
加熱して、二本鎖DNAを一本鎖にします。
② アニーリング(Annealing)
温度を下げ、プライマーをDNAに結合させます。
③ 伸長反応(Extension)
DNAポリメラーゼが、DNAを5’→3’方向へ伸ばしていきます。
この3ステップを何十回も繰り返すことで、DNAは指数関数的に増えていきます。
PCRは専用装置で行う
PCRでは、温度を細かく変化させながら反応を進めます。
この温度管理を自動で行う装置を、サーマルサイクラー(thermal cycler)と呼びます。
サーマルサイクラーは、
- 加熱
- 冷却
を繰り返しながら、
- 変性
- アニーリング
- 伸長反応
を自動で何十回も繰り返します。
PCRでは、この温度変化が非常に重要になります。
PCRで増えたDNAはどう確認する?
PCRが成功すると、目的のDNAが大量に増幅されます。
ただし、PCR後のチューブを見ただけでは、成功したかどうかは分かりません。
そこでよく使われるのが、電気泳動です。
電気泳動では、PCRで増えたDNAをゲルの中で移動させ、DNAの長さごとに分離します。
目的サイズのバンドが確認できれば、PCRが成功している可能性が高いと判断できます。
PCR産物とは?
PCR後の反応液には、
- 増幅されたDNA
- プライマー
- 酵素
- dNTP
- バッファー
などが含まれています。
このPCR後の反応液を、PCR産物(PCR product)と呼びます。
PCR産物は、
- 電気泳動
- サンガーシークエンス
- クローニング
- 遺伝子解析
など、さまざまな解析に使われます。
ただし、PCR産物には大量のDNAが含まれているため、取り扱いには注意が必要です。
チューブを開けた際に微小な飛沫(エアロゾル)が発生すると、周囲のサンプルにDNAが混入し、コンタミネーション(汚染)の原因になることがあります。
そのため、PCR前の試薬調製エリアと、PCR産物を扱うエリアは分けて運用されることもあります。
リアルタイムPCR(qPCR)とは?
通常のPCRでは、反応終了後に電気泳動を行い、DNAを確認します。
一方、リアルタイムPCR(qPCR)では、
DNAが増えていく様子をリアルタイムで測定
できます。
これは蛍光を利用して、DNA量の変化を測定しているためです。
DNA量をリアルタイムで測定できるため、ウイルス検査などにも使われています。
新型コロナウイルス検査で使われていたPCRも、多くはこのリアルタイムRT-PCRです。
よくある誤解:PCRをすれば何でも分かる?
PCRは非常に強力な技術ですが、
- どのDNAを増やすか
- どの配列を狙うか
を事前に決める必要があります。
そのため、
「何でも自動で調べてくれる万能検査」
ではありません。
特に、どのDNAを狙うかを決める「プライマー設計」は、PCRの成功を大きく左右します。
まとめ
- PCRは、少量のDNAを大量に増幅する技術
- プライマーを使って目的領域だけを増やす
- PCRは「DNAのコピー機」のようなイメージ
- 新型コロナ検査ではRT-PCRが使われた
- PCR後は電気泳動やシーケンス解析へ進む
まずは、
「調べたいDNAを大量コピーする技術」
というイメージを持てればOKです。
