スタンダードプリコーション(Standard Precautions)
という言葉を聞いたことはありますか?
医療に携わる人には身近な言葉かもしれません。
一言でいうと、
「すべての患者の血液や体液を感染性として扱う」という考え方です。
以前はユニバーサルプリコーション(Universal Precautions)と呼ばれ、主に血液感染症への対策として考えられていました。
しかし現在では、患者の血液だけでなくすべての体液を感染性として扱うという考え方が主流となり、
スタンダードプリコーション(標準予防策)
と呼ばれるようになっています。
precaution とは「予防策」という意味で、危険が起こる前に取る安全対策を指します。
Precautions(複数形)と表記されているのは、感染を防ぐための予防策が一つではなく、手指衛生や手袋、マスクなど複数の対策から成り立っているためです。
医療現場における感染性検体のリスクと予防対策
医療現場で働く作業者には、感染性検体を取り扱う際のリスクがあります。
血液には
- B型肝炎ウイルス(HBV)
- C型肝炎ウイルス(HCV)
- HIV
などの感染症の可能性があります。
そのため医療現場では、
- 手袋
- マスク
- 防護具(PPE)
などを使用して感染対策を行います。
特に1990年代〜2000年代には、採血後に針のキャップを閉め直す際の
**針刺し事故(リキャップ事故)**が問題となりました。
これは
- HIV問題
- 医療従事者の感染
などにより社会問題となりました。
そのため現在では、針が収納される安全機構付き採血針が普及し、事故防止が進んでいます。
また医療現場のルールも変わり、リキャップ(針のキャップを閉め直す行為)は禁止されています。
なぜ新しい概念が生まれたのか
ユニバーサルプリコーションは、HIV問題をきっかけに生まれました。
そのため、当初は血液感染症への対策を中心とした概念でした。
しかしその後、医療現場では
- ノロウイルス
- インフルエンザ
- MRSA
など、血液以外の感染経路による感染症が多いことがわかってきました。
そこで「すべての体液を感染性として扱う」という考え方が生まれました。
これが現在のスタンダードプリコーション(標準予防策)です。

※汗は通常感染性体液として扱われません
スタンダードプリコーションの具体例
医療現場では、次の感染対策を徹底します。
- 環境消毒
- 手指衛生:最も重要な基本対策
- 手袋 :血液や体液に触れる可能性があるとき
- マスク :飛沫感染対策
- ガウン :体液の飛散対策
- 針刺し事故防止
対象になるもの
感染の可能性があるものは次の通りです。
- 血液
- 体液
- 分泌物
- 排泄物
- 粘膜
- 傷のある皮膚
※ただし、汗は通常対象外とされています。
今の医療現場では、スタンダードプリコーションが基本です。
つまりユニバーサルプリコーションは歴史的な概念となっています。
患者の検体を扱う際は、感染対策のルールを守り、安全に作業を行うことが重要です。
