■ 体の中の5種類の抗体
まず、抗体には下記のようにいくつかの種類があります。
| 名前 | 割合(目安) | どんなときに働く? | 主にどこにある? |
|---|---|---|---|
| IgG | 約75% | 感染後期や再感染で全身を守る主力部隊 | 血液・全身組織・胎盤通過 |
| IgA | 約15% | 体の入口で侵入を防ぐ門番 | 唾液・涙・母乳・腸・気道粘膜 |
| IgM | 約10% | 感染直後に最初に出動する初動部隊 | 血液中 |
| IgE | 0.01%未満 | 寄生虫侵入やアレルギーで即反応 | 肥満細胞・好塩基球の表面 |
| IgD | ごく微量 | 免疫開始を調整するセンサー | B細胞表面 |
この中で
なぜ即時型アレルギーではIgEが中心的な役割を担うのか?それは、
即時型アレルギーにおいて、肥満細胞に高親和性で“常時結合している”主な抗体だからです。
■ なぜIgEは強烈な反応を引き起こすのか?
IgEが強い反応を起こすのは、
この抗体がもともと
寄生虫対策として進化した抗体だからです。
寄生虫は
✔ 大きい
✔ 長く体内に居座る
✔ 物理的に排除する必要がある
そのため、
即時に強い炎症を起こす仕組み
が発達しました。
それが、IgE+肥満細胞のシステムです。
■ 特異的IgEとは何か?
特異的IgEとは、特定の抗原に対してつくられたIgEのことです。
花粉症の人は花粉に対して、
卵アレルギーの人は卵に対して、
それぞれ特異的IgEが体の中で作られています。
■ 総IgEと特異的IgEの違い
■ 総IgE(total IgE)
血液中に存在するIgEの全体量。
アレルギー体質の傾向を見る指標ですが、
これだけでは
「何に反応しているか」は分かりません。
■ 特異的IgE(specific IgE)
特定の抗原に対して作られたIgEの量。
例:
- 卵特異的IgE
- ダニ特異的IgE
- ナッツ特異的IgE
つまり、
どの抗原にロックオンしているかを示す値です。
■ IgEはどのように作られるのか?
① 初回曝露(感作)
抗原が体内に入る
↓
樹状細胞が提示
↓
Th2細胞が活性化
↓
B細胞がクラススイッチ
↓
IgEが産生される
↓
IgEが肥満細胞のFcεRIに結合
ここで初めて
感作(sensitization)
が成立します。
クラススイッチとは、簡単に言うと同じ敵に対して「武器の種類を持ち替える」こと、
感作とは、「敵の顔を覚えて、弾を装填すること」です。
この段階ではまだ症状は出ません。
② 再曝露(発症)
同じ抗原が再び入る
↓
肥満細胞表面のIgEが架橋
↓
脱顆粒
↓
ヒスタミン放出
↓
症状出現
つまり、
1回目で準備、2回目で発症
です。
■ IgEは生まれつき装填されているのか?
❌ いいえ。
肥満細胞とFcεRI(エフシー・イプシロン・アールワン)は生まれつき存在しますが、
IgEは抗原に出会ってから作られ、あとから装填されます。
新生児では
- IgGは母体から移行
- IgEはほとんど移行しない
そのため、多くのアレルギーは出生後の抗原曝露によって成立します。
アレルギーそのものが遺伝するわけではありませんが、
✔ IgEを作りやすい体質
✔ バリア機能が弱い体質
などは遺伝することがあります。
■ 「IgE陽性=アレルギー」ではない
数値が高い=必ず症状が出る?
👉 いいえ。
発症には以下の条件が必要です。
✔ IgEが存在
✔ 肥満細胞に結合(感作)
✔ 抗原曝露
✔ 反応の閾値超え
これがそろって初めて
脱顆粒 → 症状
となります。
■ なぜIgEは少量なのに強力なのか?
血清中の抗体割合(目安)
- IgG:約75%
- IgA:約15%
- IgM:約10%
- IgE:0.01%未満
IgEは圧倒的に少ないです。
それでも強い理由は、
✔ 肥満細胞に常時結合
✔ FcεRI(高親和性受容体)に強固に結合
✔ 少量の抗原で架橋可能
✔ 即時脱顆粒
✔ 炎症増幅系に直結
だからです。
■ FcεRI(エフシー・イプシロン・アールワン)とは何か?
FcεRIは、主に
✔ 肥満細胞
✔ 好塩基球
が持つ高親和性IgE受容体です。
IgEはここに強固に結合し、
抗原による架橋で
γ鎖のITAMが活性化
↓
脱顆粒シグナル
が入ります。
■ IgEがアレルギーの主役なのはなぜ?
IgGは
✔ 血中を巡回
✔ 中和
✔ 補体活性化
を行いますが、
肥満細胞に常時結合していません。
IgEは
弾薬庫(肥満細胞)に装填された抗体
だから即時反応を起こすのです。
※ただし、IgGや細胞性免疫が関与するⅡ型・Ⅲ型・Ⅳ型アレルギー(薬剤アレルギーの一部、血清病、接触皮膚炎など)もあります。
■ アレルギーと自己免疫の違い
| アレルギー | 自己免疫 | |
|---|---|---|
| 攻撃対象 | 外来抗原(本来無害) | 自己組織 |
| 主抗体 | IgE | IgG・IgM |
| 反応様式 | 即時型 | 慢性型 |
| 主経路 | Th2 | Th1/Th17 |
アレルギーは「外敵の誤認」、
自己免疫は「自己の誤認」。
同じ免疫異常でも、攻撃対象が異なります。
■ まとめ
IgEが強力なのは、
✔ 高親和性受容体に装填される
✔ 少量で架橋可能
✔ 即時脱顆粒
✔ 強力な炎症増幅系に直結
だからです。
肥満細胞は生まれつき弾薬庫を持っているが、弾(IgE)は経験によって装填される。
そしてその“学習の結果”が、アレルギーという現象なのです。
