第3回:肥満細胞とは何か?アレルギーの引き金となる細胞をやさしく解説

やさしい免疫学

■ 肥満細胞とは何か?

名前だけ聞くと、

「太っている細胞?」

と思ってしまいますよね。

でも実は、

体脂肪とはまったく関係ありません。

■ なぜ「肥満」という名前?

肥満細胞(mast cell)の「mast」は、

“太っている”という意味ではなく、

顆粒をたくさん持ち、中身がぎっしり詰まっている

様子を表しています。

顕微鏡で見ると、

細胞の中が粒でいっぱいに見えます。

その見た目から名付けられました。

■ 肥満細胞はどこにいる?

血液の中を循環しているのではなく、

組織の中に常駐している細胞です。

特に多いのは:

✔ 皮膚
✔ 気道
✔ 腸管
✔ 粘膜
✔ 血管のまわり

つまり、外界と接する場所の最前線にいます。

■ 何を持っている?

肥満細胞の最大の特徴は、

中に「顆粒」を持っていること。

その中には:

✔ ヒスタミン
✔ ヘパリン
✔ 各種酵素

などが詰め込まれています。

いわば、

**炎症物質の倉庫(弾薬庫)**です。

■ 何をしている細胞なの?

一言で言うと、

外敵を察知して、即座に炎症を起こす“初動部隊”

です。

普段は静かに待機していますが、

IgEが架橋されると

→ 脱顆粒
→ ヒスタミン放出
→ 炎症開始

となります。

■ なぜIgEがくっついているの?

肥満細胞の表面には

IgE専用の受容体(FcεRI)

があります。

IgEはそこに結合した状態で待機しています。

そこへ抗原が来てIgEが架橋されると、

脱顆粒のスイッチが入ります。

これがアレルギー反応の出発点です。

■ なぜ危険なのか?

局所で起きれば、

じんましんや鼻水などで済みます。

しかし全身で一気に起こると、

血圧低下や気道閉塞といった

アナフィラキシーが起こります。

つまり肥満細胞は、

適切に働けば防御、暴走すれば命に関わる細胞です。

■ なぜ寄生虫対策の仕組みがアレルギーになるのか?

本来、

IgEが肥満細胞に結合し、

抗原によって2分子以上が架橋されると

ヒスタミンが放出されるという仕組みは、

寄生虫対策のために発達したものです。

寄生虫は

✔ 物理的に大きい
✔ 体内に長く居座る

ため、マクロファージでは処理できません。

そこで、

炎症や粘液分泌を促し、

物理的に体外へ追い出す戦略が選ばれました。


しかし近年、

寄生虫が人間にとって大きな脅威となる機会は

大幅に減少しました。

その結果、

本来寄生虫に向けられるはずだったこの仕組みが、

花粉や食べ物といった

本来は無害な物質に向いてしまったのではないか、

と考えられています。

これを

衛生仮説(hygiene hypothesis)

といいます。


■ 実際に、

寄生虫感染率が高い地域では

アレルギーが比較的少ないという報告もあります。

ただし、これはあくまで仮説であり、

単純な因果関係で説明できるものではありません。


昔のように、

寄生虫や多様な微生物に日常的にさらされていた環境では、

IgEや肥満細胞は

“本来の敵”と戦っていた可能性があります。

現代ではその敵が減り、

このシステムが花粉などに向いてしまった

可能性があるのです。


では、

同じ環境にいても

アレルギーが出る人と出ない人がいるのはなぜでしょうか。

これは、

免疫のバランスの問題

に関わります。

この点については、次回あらためて整理します。

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