■ 肥満細胞とは何か?
名前だけ聞くと、
「太っている細胞?」
と思ってしまいますよね。
でも実は、
体脂肪とはまったく関係ありません。
■ なぜ「肥満」という名前?
肥満細胞(mast cell)の「mast」は、
“太っている”という意味ではなく、
顆粒をたくさん持ち、中身がぎっしり詰まっている
様子を表しています。
顕微鏡で見ると、
細胞の中が粒でいっぱいに見えます。
その見た目から名付けられました。
■ 肥満細胞はどこにいる?
血液の中を循環しているのではなく、
組織の中に常駐している細胞です。
特に多いのは:
✔ 皮膚
✔ 気道
✔ 腸管
✔ 粘膜
✔ 血管のまわり
つまり、外界と接する場所の最前線にいます。
■ 何を持っている?
肥満細胞の最大の特徴は、
中に「顆粒」を持っていること。
その中には:
✔ ヒスタミン
✔ ヘパリン
✔ 各種酵素
などが詰め込まれています。
いわば、
**炎症物質の倉庫(弾薬庫)**です。
■ 何をしている細胞なの?
一言で言うと、
外敵を察知して、即座に炎症を起こす“初動部隊”
です。
普段は静かに待機していますが、
IgEが架橋されると
→ 脱顆粒
→ ヒスタミン放出
→ 炎症開始
となります。
■ なぜIgEがくっついているの?
肥満細胞の表面には
IgE専用の受容体(FcεRI)
があります。
IgEはそこに結合した状態で待機しています。
そこへ抗原が来てIgEが架橋されると、
脱顆粒のスイッチが入ります。
これがアレルギー反応の出発点です。
■ なぜ危険なのか?
局所で起きれば、
じんましんや鼻水などで済みます。
しかし全身で一気に起こると、
血圧低下や気道閉塞といった
アナフィラキシーが起こります。
つまり肥満細胞は、
適切に働けば防御、暴走すれば命に関わる細胞です。
■ なぜ寄生虫対策の仕組みがアレルギーになるのか?
本来、
IgEが肥満細胞に結合し、
抗原によって2分子以上が架橋されると
ヒスタミンが放出されるという仕組みは、
寄生虫対策のために発達したものです。
寄生虫は
✔ 物理的に大きい
✔ 体内に長く居座る
ため、マクロファージでは処理できません。
そこで、
炎症や粘液分泌を促し、
物理的に体外へ追い出す戦略が選ばれました。
しかし近年、
寄生虫が人間にとって大きな脅威となる機会は
大幅に減少しました。
その結果、
本来寄生虫に向けられるはずだったこの仕組みが、
花粉や食べ物といった
本来は無害な物質に向いてしまったのではないか、
と考えられています。
これを
衛生仮説(hygiene hypothesis)
といいます。
■ 実際に、
寄生虫感染率が高い地域では
アレルギーが比較的少ないという報告もあります。
ただし、これはあくまで仮説であり、
単純な因果関係で説明できるものではありません。
昔のように、
寄生虫や多様な微生物に日常的にさらされていた環境では、
IgEや肥満細胞は
“本来の敵”と戦っていた可能性があります。
現代ではその敵が減り、
このシステムが花粉などに向いてしまった
可能性があるのです。
では、
同じ環境にいても
アレルギーが出る人と出ない人がいるのはなぜでしょうか。
これは、
免疫のバランスの問題
に関わります。
この点については、次回あらためて整理します。
