フローサイトメトリー入門:まず知っておきたい白血球の分類

やさしい免疫学

研究室や臨床検査でよく使われる分析装置にフローサイトメトリー(Flow Cytometry)があります。

フローサイトメトリーは、血液中の細胞を1個ずつ解析し、細胞の種類や割合を調べることができる装置です。

特に免疫研究では

・T細胞
・B細胞
・NK細胞

などのリンパ球サブセット解析に用いられます。

この装置を理解するためには、まず白血球の基本分類を知っておく必要があります。

この記事では、フローサイトメトリーを理解するために、最低限知っておきたい白血球の知識を解説します。

血液の主な構成

血液は次の4つの成分から構成されています。

  • 血漿
  • 赤血球
  • 血小板
  • 白血球

それぞれの主な役割は次のとおりです。

このうち、赤血球・血小板・白血球は血液中に存在する細胞成分です。

フローサイトメトリーでは、これらの血液細胞の中でも主に白血球を対象として解析します。

白血球の大分類

白血球はそれぞれ異なる役割があり、大きく 顆粒球と単核球の2つのグループに分類されます。白血球の分類を図でまとめると、次のようになります。

このように白血球は、顆粒球・単核球に分かれ、さらに5種類の細胞に分類されます。

免疫の働きで見ると、

  • 顆粒球や単球は 自然免疫
  • リンパ球は 獲得免疫

に関わる細胞です。

なお、リンパ球の一種である NK細胞は自然免疫寄りの働きを持つ細胞として知られています。

フローサイトメトリーでは、この白血球の中でも 主にリンパ球を詳しく解析します。

白血球の種類と働き

白血球は5種類に分類され、それぞれ異なる役割を担っています。主な働きをまとめると次の通りです。

白血球の割合は個人差がありますが、一般的には次のような構成になっています。
一般的に好中球が最も多く約50〜70%を占めます。
図では、青色は自然免疫、紫色は獲得免疫を示しています。

好中球(Neutrophil)

白血球の 50〜70% を占める、白血球の主力部隊です。

役割

・細菌を食べる(貪食)
・炎症の初期に集まる
・膿の主成分


好酸球(Eosinophil)

割合は 1〜5% です。
寄生虫への防御やアレルギー反応に関わる細胞です。


好塩基球(Basophil)

割合は 1%未満 と最も少ない白血球です。
ヒスタミンを放出し、アレルギー反応に関わります。

※実際のアレルギー反応の中心は 肥満細胞(mast cell) です。


単球(Monocyte)

割合は 2〜8% です。
組織に入ると マクロファージ に分化し、免疫反応の調整に関わります。


リンパ球(Lymphocyte)

割合は 20〜40% です。
ここが フローサイトメトリーの主戦場 になります。

リンパ球は

  • T細胞 :免疫の司令塔・感染細胞を攻撃
  • B細胞 :抗体を作る
  • NK細胞 :ウイルス感染細胞や腫瘍を殺す

の3種類に分かれます。

フローサイトメトリーでは

CD3 / CD4 / CD8 / CD19 / CD56

などの細胞の表面にあるタンパク質(CD抗原) を測定し、リンパ球の種類や割合を解析します。

CD抗原とは?フローサイトメトリーで何を見ているのか?

フローサイトメトリーでは、**CD抗原(Cluster of Differentiation)**という細胞表面のタンパク質を測定することで、細胞の種類を判別します。

CD抗原は、細胞の種類を識別するための目印のようなものです。

例えば、次のようにそれぞれの細胞には目印となる「名札」がついています。

これらのCD抗原を蛍光標識した抗体で染色し、レーザーで測定することで細胞の種類を判定します。

つまり細胞を人に例えると、フローサイトメトリーは細胞についた名札を読み取る装置と考えることができます。

またフローサイトメトリーでは、FSC / SSCという指標を用いて細胞の大きさや内部構造も解析します。

フローサイトメトリーは、免疫学研究だけでなく、白血病や免疫疾患の診断など臨床検査の現場でも広く利用されています。
細胞の種類や割合を詳しく解析できるため、免疫状態を評価する重要な技術の一つです。

まとめ

フローサイトメトリーを理解するためには、次のポイントを押さえておくと理解しやすくなります。

  • 白血球は 顆粒球と単核球 に分類される
  • 白血球は 5種類(好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球) に分かれる
  • リンパ球は T細胞・B細胞・NK細胞 に分類される
  • フローサイトメトリーでは CD抗原(細胞表面マーカー) を測定して細胞の種類を判別する
  • FSC / SSC を利用して細胞の大きさや内部構造も解析する

このようにフローサイトメトリーでは、細胞表面のマーカーと細胞の物理的な特徴を組み合わせることで、免疫細胞の種類や割合を詳しく解析することができます。


次の記事では、フローサイトメトリーの測定原理(FSC / SSC)について解説します。

今日のおさらい

~ちょっと考えてみよう~

Q1;細菌感染で最も増える白血球はどれでしょう?
A 好中球
B 好酸球
C リンパ球

Q2;白血球の中でフローサイトメトリーで主に解析するのはどれでしょう?
A 好中球
B リンパ球
C 単球


答え

Q1;A
Q2;B

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