フローサイトメトリーでは、細胞表面の抗原を識別するために 蛍光抗体 が使われます。
抗体に結合した蛍光色素にレーザーを照射すると蛍光が発生し、その信号を測定することで、特定の抗原の発現の有無や強さにもとづいて細胞集団を区別します。
この記事では
- 蛍光抗体とは何か
- フローサイトメトリーで蛍光が検出される仕組み
- なぜ複数の抗原を同時に測定できるのか
を初心者向けに解説します。
蛍光抗体とは
フローサイトメトリーでは、蛍光色素が結合した抗体(蛍光抗体)を使用します。
蛍光抗体とは、抗体に蛍光色素を結合させた試薬です。
抗体は特定の抗原に結合する性質を持っています。
そのため、蛍光抗体を使うことで 特定の細胞表面抗原を識別することができます。
フローサイトメトリーでは、この蛍光を利用して細胞を分類します。
蛍光色素とは
蛍光色素とは、レーザーが当たると光を放出する分子です。この現象を 蛍光(fluorescence) と呼びます。
それぞれ異なる波長の光を出す性質があり、この光を機械が検出します。
研究室では主に下記の蛍光色素が使われることが多いです。

それぞれ異なる蛍光を発するため、複数の抗原を同時に測定することが可能になります。
フローサイトメトリーで蛍光が検出される仕組み
フローサイトメーターでは、細胞にレーザーを照射します。
蛍光抗体が結合した細胞にレーザーが当たると、蛍光色素が励起され 特定の波長の光(蛍光) を放出します。
この光はフィルターによって色ごとに分けられ、検出器で測定されます。※ミニコラム参照
その結果、抗原の有無や発現量を解析することができます。

このように異なる蛍光色素を組み合わせることで、フローサイトメトリーでは複数の抗原を同時に解析することができます。
しかし、ここで1つ問題が生じます。
蛍光色素はそれぞれ完全に独立した波長域だけで光るわけではなく、本来のチャンネル以外の検出器にも一部の光が入り込むことがあります。
これを、スペクトルオーバーラップと言います。
そして、この問題を補正する仕組みを コンペンセーション(compensation) と呼びます。
ミニコラム:蛍光が光る仕組み(励起波長と放出波長)
蛍光色素は、特定の波長の光を吸収すると光を放出する性質を持っています。
蛍光色素にレーザー光が当たると、その光を吸収して一時的に高いエネルギー状態になります。このとき吸収される光の波長を 励起波長(excitation wavelength) と呼びます。
その後、蛍光色素は余分なエネルギーを放出して元の状態に戻ります。このときに放出される光を 蛍光 と呼び、その光の波長を 放出波長(emission wavelength) と言います。
フローサイトメトリーでは、この放出波長(蛍光)を測定しています。
一般に、放出される光は吸収した光よりもエネルギーが低くなるため、放出波長は励起波長よりも長くなります。
フローサイトメトリーでは、この蛍光の色(波長)を検出することで、細胞表面の抗原を識別しています。
また、蛍光色素ごとに励起波長や放出波長が異なるため、複数の蛍光色素を組み合わせて多色解析を行うことができます。
フローサイトメトリーで蛍光抗体を使う理由
蛍光抗体を使うことで
- 複数の抗原を同時に測定できる(異なる色の蛍光を組み合わせられるため)
- 細胞の種類を分類できる
- 細胞の状態を詳しく解析できる
といった利点があります。
フローサイトメトリーでは、この仕組みを利用して免疫細胞の解析が行われています。
まとめ
- 蛍光抗体は 抗体に蛍光色素を結合させた試薬
- レーザーを照射すると蛍光が発生する
- 蛍光の波長の違いを利用して 複数の抗原を同時に測定できる
今日のおさらい
~ちょっと考えてみよう~
Q1:FITCの色は?
A 緑
B 赤
C 青
Q2:蛍光が他の検出器に漏れる現象は?
Q3(超重要):その漏れを補正する操作を何と言いますか?
答え:
Q1:A
Q2:スペクトルオーバーラップ
Q3:コンペンセーション
フローサイトメトリーでは、複数の蛍光色素を同時に使うため 蛍光が重なってしまう問題が発生します。
次回は、この問題を補正する コンペンセーション(compensation) の仕組みを解説します。
