フローサイトメトリー入門③CD抗原とは?リンパ球を見分ける目印

やさしい免疫学

フローサイトメトリーでは、細胞の表面にある「目印」を利用して細胞の種類を見分けます。
この目印となる分子が CD抗原 です。

この記事では、CD抗原とは何か、そしてフローサイトメトリーでどのように利用されるのかを解説します。

CD抗原とは

免疫細胞の表面には、それぞれ特徴的なタンパク質が存在します。
これらのタンパク質は、細胞の種類を識別する目印となります。

この目印となる分子を CD抗原 と呼びます。

CDとは「Cluster of Differentiation」の略で、もともとは同じ分子を認識するモノクローナル抗体のグループを国際的に分類するために付けられた名称です。

現在では、その抗体が認識する細胞表面分子そのものも、CD抗原(CD分子)と呼ばれています。

CD抗原は細胞の「名札」

CD抗原は、細胞に付いている 名札のようなものです。このCD抗原のパターンと細胞の大きさ・内部構造の情報を組み合わせて細胞を識別することができます。

このように、各細胞はそれぞれ特徴的なCD抗原を持っていたり、持っていなかったりします。

フローサイトメトリーでは、散乱光(FSC/SSC)と蛍光標識抗体からの蛍光シグナルを同時に測定します。


なぜCD抗原が必要なのか

血液中には多くの免疫細胞があります。

例えば

  • T細胞
  • B細胞
  • NK細胞
  • 単球
  • 好中球

しかし顕微鏡で見ると、リンパ球は全部ほぼ同じ形です。

つまり見た目では区別できません。

そこで使うのがCD抗原です。


ミニコラム:なぜCDという番号なのか?

昔、免疫研究者たちは「この抗体は同じ分子を認識しているのでは?」という抗体を集めて分類しました。

その時の国際会議でCluster of Differentiationという名前が付けられました。

意味は

分化を区別するための分類

です。

そして

  • CD1
  • CD2
  • CD3
  • CD4
  • CD5

のように番号が付けられました。

現在までに CD1 から CD371 まで多くのCD分子が定義されており、今も新しい分子が追加されています。

フローサイトメトリーでCD抗原を調べる方法

フローサイトメトリーでは、蛍光標識した抗体を使います。

抗体は特定のCD抗原に結合する性質があります。

この抗体に蛍光色素を結合させておくことで、抗体がCD抗原に結合した細胞を蛍光で検出することができます。
フローサイトメーターではレーザー光を当てて蛍光色素を励起し、その蛍光シグナルを検出することでCD抗原を測定します。

イメージでいうと蛍光色素は、マッチの頭のようにレーザー光を受けると特定の光を発する性質を持っています。ただし、燃えるわけではなく光を出す現象です。

フローサイトメトリーでCD抗原を測る理由

フローサイトメトリーでは、CD抗原を認識する抗体(CD抗体)に蛍光色素を標識した蛍光抗体を用いて細胞を染色します。

リンパ球のCD抗原に対応する抗体は、下記のように分類することができます(一例)。

CD抗原の組み合わせ

フローサイトメトリーでは、CD抗原の陽性・陰性の組み合わせによって細胞の種類を識別します。


ミニコラム:CD16とCD56について

NK細胞のマーカーとして、CD16やCD56がよく使われます。

NK細胞は一般的にCD3陰性、CD16陽性、CD56陽性という特徴を持っています。

ただし注意点として、CD16はNK細胞だけに存在する分子ではありません。
CD16(Fcγ受容体)は単球や好中球などにも発現していることがあります。

そのため臨床検査ではCD3陰性かつCD16/CD56陽性という組み合わせでNK細胞を同定します。

リンパ球の分類のまとめ

ここまで説明してきたCD抗原の組み合わせを整理すると、リンパ球は次のように分類できます。

このようにフローサイトメトリーでは、CD抗原の組み合わせを調べることでリンパ球の種類を識別します。

研究・臨床での活用

フローサイトメトリーは主に次のような場面で利用されます。

免疫状態の確認
例:HIV感染ではCD4陽性T細胞が減少します。

急性骨髄性白血病の診断
例:CD34+、CD117+、CD13+ などのマーカーは急性骨髄性白血病(AML)でよく見られ、他のマーカーや形態・遺伝子検査と合わせて診断に用いられます。

免疫細胞の解析

  • T細胞の割合
  • B細胞の割合
  • NK細胞の割合

CD抗原とは、免疫細胞の表面にある目印となるタンパク質であり、フローサイトメトリーではこのCD抗原の組み合わせを利用して細胞の種類を識別します。

まとめ

  • フローサイトメトリーでは、CD抗原の陽性・陰性の組み合わせを利用して細胞の種類を識別します。
  • CD抗原とは、免疫細胞の表面に存在する特徴的なタンパク質です。
  • フローサイトメトリーでは抗原抗体反応を利用し、CD抗原に特異的に結合するCD抗体(蛍光抗体)を反応させます。
  • 各細胞にはそれぞれ特徴的なCD抗原があり、例えばT細胞ではCD3が陽性になります。

今日のおさらい

~ちょっと考えてみよう~

Q1:CD3+、CD4+、CD8- のとき、この細胞は何と判別されるでしょうか?


答え

ヘルパーT細胞

次回はフローサイトメトリーでよく使われる
CD4とCD8のドットプロットの読み方について解説します。

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