フローサイトメトリーでは、T細胞を CD4 と CD8 という抗原を使って分類します。
これらを同時に測定すると、結果は ドットプロット と呼ばれる2次元グラフとして表示されます。
この記事では次の内容を解説します。
- CD4/CD8プロットによるT細胞の分類方法
- CD4とCD8とは何か
- ドットプロットの読み方
※本記事では、初心者向けにフローサイトメトリーの基本的な解析の流れを解説しています。実際の研究や臨床検査では、目的に応じてさらに多くのマーカーや解析手法が使われることもあります。
CD4とCD8とは
T細胞には主に2種類※あります。

これらの細胞は、細胞表面にあるCD抗原によって区別することができます。
T細胞は共通して CD3抗原を持っており、その上で
- CD4のみを持つ細胞 → ヘルパーT細胞(CD4+)
- CD8のみを持つ細胞 → キラーT細胞(CD8+)
に分類されます。
そのため、フローサイトメトリーでは
CD4抗原とCD8抗原を同時に測定することで、T細胞の種類を分類します。
※T細胞は大きくCD4陽性とCD8陽性の2つに分類されますが、実際には制御性T細胞(Treg)や記憶T細胞など多様なサブセットが存在します。
ドットプロット
フローサイトメトリーでは、細胞表面の抗原を抗体で染色して解析します。
例えばT細胞を分類する場合には
- CD4抗体
- CD8抗体
を用いて細胞を染色します。
このように 2種類の抗原を同時に測定すると、結果は2次元のグラフ(ドットプロット)として表示されます。
ドットプロットでは、1つの点が1つの細胞を表します。
同じ種類の細胞は似た位置に集まるため、点は横一列ではなく**雲のような集団(クラスター)**として表示されます。
CD4抗体とCD8抗体で染色すると、細胞は次の4つの領域に分かれます。

CD4を多く発現する細胞はグラフの右側に、CD8を多く発現する細胞は上側に分布します。
CD4とCD8の両方を発現する細胞は、ドットプロットでは右上の領域に現れます。
ただし、末梢血ではCD4+CD8+細胞はごく少数(通常1%未満)で、ほとんど見られません。
※実際のフローサイトメトリーでは、ドットの色はすべて同じ色で表示されます。
本記事では理解を助けるため、細胞集団ごとに色分けしています。
CD4 / CD8プロットの意味
上記のドットプロットの結果、T細胞は次のように分類されます。

CD4/CD8比とは?
正常な成人の末梢血※では、T細胞はおおよそ次のような割合で分布しています。
※末梢血とは、腕などの末梢の血管から採取した血液のことを指します。臨床検査で一般的に調べる血液は、この末梢血です。

なお、これらの割合は年齢や感染症、免疫状態などによって変動することがあります。
ここで重要になる指標が CD4/CD8比です。
免疫学では CD4/CD8 ratio という値を指標として用います。
計算方法 ; CD4 T細胞 ÷ CD8 T細胞
正常値は おおよそ1.5〜2.5 とされています。
ただし、この値は
- 年齢
- 性別
- 測定施設
- 測定方法
などによって変動するため、1.0〜2.9程度の範囲に収まることもあります。
一般的に 1.0〜1.5程度は低めとみなされる場合があります。
なぜCD4/CD8比が重要なのか
例えば HIV感染では、HIVが CD4 T細胞を破壊します。
その結果、CD4が減少し
CD4/CD8 < 1
となります。
このため、CD4/CD8比は免疫状態を評価する重要な指標として用いられ、感染症や免疫不全の評価に利用されます。
実際のフローサイト実験の流れ
フローサイトメトリーの実験は次の手順で行われます。
① 血液を採取
② 赤血球を溶血する
③ 抗体(例:CD3、CD4、CD8)を加える
④ フローサイトメーターで測定
⑤ FSC / SSC でリンパ球ゲート
⑥ CD3でT細胞ゲート
⑦ CD4 / CD8プロット解析
フロー解析の基本戦略
フローサイト解析は段階的に細胞を絞り込むことが基本です。
全細胞
↓
リンパ球
↓
T細胞
↓
CD4 / CD8
この考え方を ゲーティング戦略 と呼びます。
※実際の解析では、目的に応じて複数の抗体を組み合わせ、さらに詳細な細胞分類を行うこともあります。
まとめ
- T細胞は大きく ヘルパーT細胞(CD4+) と キラーT細胞(CD8+) の2種類に分類される
- フローサイトメトリーでは CD4抗体とCD8抗体 を使い、ドットプロットで細胞を分類する
- ドットプロットでは 1つの点が1つの細胞 を表し、同じ細胞は集団(クラスター)として表示される
- CD4/CD8プロットでは 4つの領域に細胞が分かれる
- 免疫状態を評価する重要な指標として CD4/CD8比 が使われる
- フローサイト解析では、全細胞 → リンパ球 → T細胞 → CD4/CD8 のように段階的に細胞を絞り込んで解析する。このように目的の細胞集団を順番に特定していく考え方を ゲーティング戦略 と呼ぶ
今日のおさらい
~ちょっと考えてみよう~
Q1:FSC / SSCゲートの目的は?
Q2:CD3抗体は何を識別するために使いますか?
Q3(重要):CD4/CD8比が 0.5 の場合、どんな状態が疑われますか?
答え
Q1:リンパ球を絞り込むため
Q2:T細胞そのものを識別するため
Q3:免疫機能異常(HIV感染、慢性炎症、免疫老化など)の可能性
フローサイトメトリーでは、抗体に結合した 蛍光色素 を使って細胞を識別します。
では、この蛍光はどのように検出され、なぜ複数の抗原を同時に測定できるのでしょうか?
次回は 蛍光抗体の仕組み について解説します。
