採血管は大きく、血液を凝固させて血清を得るものと、抗凝固して血漿や全血を得るものに分けられます。
そしてややこしいのが血清と血漿の違いです。
実際に検査を始めればすぐに覚えられますが、教科書だとなかなかイメージできないですよね。
この記事では、
- 採血管の本質的な分類(固まる/固まらない)
- 血清と血漿の違い
- なぜ検査によって採血管を使い分けるのか
血清と血漿の違いを軸に、採血管の使い分けを“理解ベース”で解説します。
採血管の本質は「固めるか・固めないか」
採血管は一見バラバラに見えますが、
実はシンプルに「血液を固めるか、固めないか」の2つに分けられます。
そして、その使い分けは「何を測りたいか」で決まります。
血液を固めるタイプ(血清)
採血管の種類
🔴 赤
🟡 黄(SST:血清分離管)
血液を凝固させ、上澄みである「血清」を得るための採血管です。
血清が向いている検査
- 生化学検査(電解質・酵素など)
余計な影響が少ない
※細胞成分や凝固因子の影響を受けにくい
SSTとは?
SSTとは、**Serum Separator Tube(血清分離管)**の略です。
血清をきれいに分けるための採血管で、
中に入っている**分離ゲル(分離剤)**がセパレーターとして働きます。
遠心すると、このゲルが血清と血餅の間に移動し、物理的な壁を作ることで両者を分離します。
そのためSSTは、
- 血液を固めて血清を作る
- さらに血清と血餅を分離する
という2つの役割を持つ採血管です。
赤管は製品によって添加剤の有無が異なりますが、主に血清を得るために使用されます。
一方、黄色管(SST)は凝固促進剤と分離ゲルにより、血清を安定して分離することを目的とした採血管です。
SSTの種類
SSTにはいくつかの種類があります。
- SST I
- SST II(改良型・現在の主流)
SST IIでは分離ゲルの性能が改良されており、より安定した分離が可能になっています。
そのため、現在の臨床現場ではSST IIが主流となっています。
赤と黄色の違い
🔴 赤(プレーン管)
■添加剤なし(または微量の凝固促進剤)
赤管は製品によって添加剤の有無が異なりますが、血清を得るために使用されます。
現在は主流ではありませんが、ピュアな血清を扱いたい場合に使用されます。
- 自然にゆっくり固まる
- 分離がやや不安定
- 血球成分が混ざることがある
※遠心後の取り扱いで再混入が起こることもあります。
🟡 黄(SST:血清分離管)
■凝固促進剤+分離ゲル入り
黄色管(SST)は、凝固促進剤と分離ゲルにより、血清を安定して分離するための採血管です。
遠心すると、血清と血餅の間にゲルの壁が形成され、きれいに分離されます。
そのため、
- 血球成分の混入を抑え、安定した分離が可能
- 検体のばらつきを抑え、安定した測定が可能
というメリットがあります。
※ゲルは血清と血球の中間の比重を持つため、この位置で止まります。
赤と黄色の本質的な違いは、分離を助ける仕組み(ゲル)があるかどうかです。
なぜ現在は黄(SST)が主流なのか
以前は分離ゲルがなかったため、赤管が主流でした。
しかし現在は、
- 自動化
- 多検体処理
が求められるため、安定性・再現性の高い黄色(SST)が主流となっています。
血液を固めないタイプ(血漿・全血)
採血管の種類
🟢 緑(ヘパリン)
🟣 紫(EDTA)
🔵 青(クエン酸)
⚫灰(フッ化Na)
抗凝固剤が入っており、血液を液体のまま保ちます。
血漿・全血が向いている検査
- 凝固検査(PT・APTT)
- 血球検査
- フローサイトメトリー
これらは、「生きた状態」や「凝固機能」を評価する検査です。
※凝固因子が残っているため、機能評価が可能です。
※フローサイトメトリーでは、EDTA全血やヘパリン血など、目的や測定条件に応じて採血管が選択されます。
重要なポイント
同じ「血液を固めない採血管」であっても、
血液が固まらないようにする仕組みはそれぞれ異なります。
そのため、固まらない採血管であればどれでもよいわけではなく、
目的に応じて適切に選択する必要があります。
「固まる vs 固まらない」で何が起きる?
末梢血を採血管に入れると、血液が固まるものと固まらないものがあります。
この違いによって、遠心後の状態は大きく変わります。
両者の違いは、
- 上澄みが血清か血漿か
- 下層が血餅か血球か
にあります。
本記事では「固める/固めない」で整理していますが、実際の臨床現場では、添加剤の種類と検査目的に応じて採血管を使い分けます。

血が固まる採血管(血清)
血液は時間とともに凝固し、
- 上:血清(上澄み)
- 下:血餅(細胞+フィブリン)
に分かれます。
※凝固因子(フィブリノーゲン)は消費されています。
補足:血餅は検査に使うのか?
血液を固めると、血清と血餅に分かれますが、実際の検査で使用するのは血清です。
血餅は主にフィブリンと血球成分からなるため、
- 成分が不均一
- 前処理が必要
- 再現性が低い
といった理由から、通常の検査には使用されません。
※一部、研究用途などでDNA抽出に利用されることがあります
固まらない採血管(血漿・全血)
抗凝固剤により、血液は固まりません。
遠心すると、
- 上:血漿
- 中:バフィーコート(白血球・血小板)
- 下:血球(赤血球、顆粒球など)
に分かれます。
血漿は、凝固因子(フィブリノーゲン)を含んでいるのが大きな特徴です。
血清と血漿の違い

なぜ血漿でも採血管を使い分けるのか?
血漿は同じように見えても、使用する抗凝固剤によって性質が異なります。
そのため血漿の使い分けは「何を測りたいか」で決まります。
- クエン酸:凝固機能を評価するため(カルシウムと結合することで凝固反応を抑制)
- EDTA:細胞を保つため(カルシウムを強くキレートし、凝固を抑制)
- ヘパリン:血液の状態を保つため(反応のみ阻害)
同じ「固まらない採血管」であっても、血液凝固の止め方が異なるため、
何の検査に使うのか、何を調べたいのかによって使い分ける必要があります。
※詳しくは別の記事で解説します。
まとめ
- 使い分けは「何を調べたいか」で決まる
- 採血管は「固めるか・固めないか」で考えると整理しやすい
- 固める採血管では血清、固めない採血管では血漿が得られる
- 血清は凝固因子を含まず、血漿は凝固因子を含む
- 固まらない採血管でも、抗凝固剤によって性質が異なる
今日のおさらい
~ちょっと考えてみよう~
Q1. 血清と血漿の違いは?
Q2. 凝固因子が残っているのはどっち?
Q3. フローサイトメトリーはどのタイプの採血管?
A1:血清はフィブリノーゲンを含まず、血漿はフィブリノーゲンを含む
A2:血漿
A3:血液が固まらない採血管(EDTA、ヘパリンなど)
