抗体はどこでどうやって作られるのか?免疫の主役「抗体」の働き やさしい免疫学③

やさしい免疫学

抗体とは?体の中でどのように作られるのか

前回は「抗原」について整理しました。

抗原には自己抗原と非自己抗原があり、免疫学では一般的に、体の外から入ってくる非自己抗原のことを異物と呼ぶことが多いと説明しました。

私たちの体には、この 異物を体から排除する仕組み が備わっています。

その中心となるのが抗体(こうたい) です。

今回は

  • 抗体とは何か
  • 抗体はどこで作られるのか
  • 抗体はどうやって抗原を見分けるのか

について、できるだけやさしく整理していきます。

そもそも抗体は体のどこにあるのか?

抗体は主に血液や体液の中に存在するタンパク質です。

特に血清(けっせい)と呼ばれる血液の液体成分の中に多く含まれています。

血清にはさまざまなタンパク質がありますが、その中の

γグロブリン

と呼ばれるタンパク質が**抗体(免疫グロブリン)**です。

抗体とは?

抗体とは、抗原にぴったり結合するタンパク質です。

免疫の世界ではよく鍵と鍵穴で例えられます。

  • 抗原 → 鍵
  • 抗体 → 鍵穴

抗体は、特定の抗原にだけ結合するという特徴があります。

例えば

  • 花粉に反応する抗体
  • インフルエンザに反応する抗体
  • ダニに反応する抗体

など、抗体はそれぞれ決まった相手にしか結合できません。

つまり抗体は異物をピンポイントで認識するセンサーのようなものです。

抗体は「目印」をつける働きがある

抗体は単独で敵を倒すわけではありません。

主な役割は「敵に目印をつけること」です。

例えば

  • ウイルスにくっつく
  • 細菌にくっつく

すると免疫細胞が「ここに敵がいる!」と認識できるようになります。

この働きをオプソニン化と言います。

抗体は異物に結合して、免疫細胞に「ここに敵がいる」と知らせる目印の役割をしています。


抗体はどこで作られるのか?

抗体を作るのは、血液中の白血球の一種であるB細胞です。

B細胞は骨髄(こつずい)で作られます。

その後、体の中をパトロールしながら、自分が反応できる抗原を探しています。

しかし、ここで重要なポイントがあります。

実はB細胞は最初から抗体を分泌しているわけではありません。

B細胞は抗原に出会う前から、細胞の表面に膜型抗体(B細胞受容体:BCR)を持っています。この受容体によって抗原を認識することができます。

そして抗原に出会うとB細胞は増殖し、

  • 抗体を大量に作る 形質細胞
  • 次の感染に備える 記憶B細胞

に分かれます。

形質細胞は抗体を大量に分泌する細胞で、体内で抗原を攻撃するための抗体を作ります。

抗体が作られる流れ

抗体が作られる流れをシンプルに整理するとこうなります。

このとき、B細胞は形質細胞(プラズマ細胞)に変化します。

形質細胞は抗体を作る専門工場のような細胞です。

1つの形質細胞は1秒間に数千個の抗体を作るという報告もあります。

また、一部のB細胞は記憶B細胞となり、次に同じ抗原が入ってきたときに、より早く抗体を作ることができるようになります。
この仕組みを免疫記憶と言います。

なぜ体は無数の抗体を作れるのか?

ここで疑問が出てきます。

どうして体は花粉、ウイルス、細菌、毒素など無数の異物に対応できるのでしょうか。

その理由は抗体の設計図が組み替えられる仕組みがあるからです。

抗体を作るB細胞の中では、抗体の遺伝子がパズルのように組み替えられる仕組みがあります。

この仕組みを遺伝子再構成(V(D)J再構成)と言います。

この組み替えによって、体の中では数千万〜数億種類とも言われる抗体のパターンを作ることができます。

つまり体は最初から「どんな敵が来ても対応できる可能性」を準備しているのです。

そして実際に抗原に出会ったB細胞だけが増殖して大量の抗体を作るようになります。

この仕組みをクローン選択と言います。

次の感染に備える「記憶B細胞」

一部のB細胞は記憶B細胞に分化し、長く体内に残ります。
そして同じ抗原が再び体に入ってきたときに、すばやく大量の抗体を作ることができるようになります。

これが一度感染すると次に強くなる理由であり、この仕組みを利用したものが ワクチンです。

記憶B細胞による免疫記憶は、獲得免疫の本質です。
ワクチンは、この免疫記憶をあらかじめ作っておくための方法です。

抗体の役割

抗体が抗原に結合するとさまざまな免疫反応が起こります。

例えば

■ ウイルスを無力化する
■ 細菌を目印にして免疫細胞に知らせる
■ アレルギー反応を引き起こす

つまり抗体は免疫反応のスイッチのような役割を持っています。

抗体はすべて同じ働きではありません。抗体には5種類あり、それぞれ役割が違います。

抗体の種類は途中で変わる

実はこれらの抗体は、最初からすべて作られるわけではありません。

免疫反応が進むにつれて、抗体の種類が途中で変わることがあります。

この仕組みをクラススイッチ(クラススイッチング)と呼びます。

このクラススイッチによって、同じ異物に対しても

  • 感染防御
  • 粘膜防御
  • アレルギー反応

など、さまざまな免疫反応が起こります。

クラススイッチは、アレルギーの仕組みを理解するうえでも重要なポイントです。

次の記事ではクラススイッチとは何か?について整理していきます。

まとめ

今回のポイントを整理します。

  • 抗体は抗原に結合するタンパク質
  • 抗体はB細胞が作る
  • B細胞は抗原に出会うと形質細胞と記憶B細胞に分化する
  • 抗原に出会うと抗体が大量に作られる
  • 体には最初から多種類のB細胞が存在する

つまり抗体とは体が異物をピンポイントで認識するための仕組みなのです。


今日のおさらい

〜ちょっと考えてみよう〜

Q1. 抗体を作る細胞は何でしょう?

A
B細胞


Q2. 抗体はどんな物質でしょう?

A
抗原に結合するタンパク質


Q3. 抗体はいつ作られるでしょう?

A
抗原に出会ったとき


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