SDS(Safety Data Sheet;安全データシート)とは、化学物質の危険性や安全な取り扱い方法をまとめた文書です。
主に事業者が化学物質を他の事業者へ提供する際に交付される資料で、労働安全衛生法などの法律によって制度化されています。
SDSの目的
SDSは労働安全衛生法などで定められている制度で、次のような情報が記載されています。
- 化学物質の物理的・化学的性質
- 人体への影響
- 応急処置
- 取り扱い方法
- 保管方法
これらの情報を共有することで、労働者の安全確保やリスクアセスメントの実施を支援することが目的です。
なお、以前は MSDS(Material Safety Data Sheet) と呼ばれていましたが、
2011年頃から国際基準である GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム) に合わせて SDS に統一されました。
SDSの16項目
SDSは通常 16項目(JIS Z 7253) で構成されています。
主な内容は次の通りです。

※SDSを確認する際は、
2「危険有害性の要約」
8「ばく露防止および保護措置」
11「有害性情報」
をまず確認すると、作業上のリスクを把握しやすくなります。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、
その職場で化学物質を使用した場合に作業者や作業環境にどの程度の危険が及ぶのかを事前に評価することです。
例えば次のような条件を考慮します。
- 使用量
- 使用時間
- 作業環境
- 保護具の着用状況
これらを踏まえて危険性を評価し、事故や健康被害を防ぐための対策を立てます。
リスクアセスメントは、労働安全衛生法により実施が義務付けられています。
SDSの交付義務
SDSは次のような場合に交付が必要になります。
- 特定の化学物質を含む単一物質
- 基準濃度以上の混合物
これらを事業者間で譲渡・提供する場合に、SDSの交付が義務付けられています。
ただし次のようなものは対象外です。
- 密封された製品
- 一般消費者向け製品
- 食品など
SDSが必要な化学物質の特徴
SDSが必要な化学物質は、主に次のような特徴があります。
危険有害性が高い
GHS分類で
- 急性毒性
- 皮膚腐食性
- 発がん性
などに該当するものです。
環境や健康への影響が大きい
例
- 揮発性有機化合物(VOC)
- 環境汚染物質
混合物も対象
単一物質だけでなく、
- 塗料
- 洗剤原料
などの混合物でも基準濃度以上であれば対象になります。
SDSは誰のための文書?
SDSは主に事業者同士の取引で関係する文書です。
例えば、試薬を販売する仲介業者と、研究室や検査会社などで試薬を購入する事業者の関係です。
一般消費者向け製品(家庭用洗剤など)は通常対象外です。
供給者(作成・交付側)
化学物質を
- 製造
- 輸入
- 販売
する事業者は、化学物質を提供する際にSDSを作成・交付する義務があります。
例えば、試薬の仲介業者は製造メーカーからSDSを入手し、購入者に対して商品とともにSDSを提供します。
提供方法は
- 紙
- メール
- 電子データ
などです。
また、多くの化学メーカーでは自社のホームページでSDSを公開しており、製品名や型番を検索することで閲覧・ダウンロードできる場合もあります。ただし、すべての製品が公開されているわけではないため、必要に応じて供給者へSDSの提供を依頼することが必要です。
受領者(受け取り側)
化学物質を受け取る事業者は、SDSを基に
- リスクアセスメント
- 作業者教育
- 保護具選定
- 緊急対応
などの安全管理を行います。
現場の労働者
実際に化学物質を取り扱う労働者も、SDSの情報を確認しながら
- 安全な取り扱い
- 緊急時の対応
を行います。
SDSは印刷して保管しておく必要がある?
現場では「SDSは印刷して貼っておけ」と言われることがあります。
しかし、法律上は印刷して保管する義務はありません。
必要なのは労働者がいつでも内容を確認できる状態にしておくことです。
推奨される運用
多くの現場では次のような運用がされています。
- 作業場に印刷して備え付ける
- 電子データで保管する
- 更新版を管理する
SDS更新のルール
SDSは
- 法改正
- 新しい毒性データ
などによって更新されることがあります。
供給者は内容が変更された場合、受領者に最新版を提供する義務があります。
また、2023年の労働安全衛生法改正では人体影響に関する項目を5年以内に1回確認する義務が追加されました。
実際の現場の課題
実際の現場では
- SDS更新の通知が来ない
- 仲介業者から伝わらない
などの問題も多くあります。
そのため、受領者側も必要に応じてSDSを確認・要求することが重要です。
まとめ
SDSは、化学物質を安全に取り扱うための重要な情報源です。
- 化学物質の危険性を理解する
- 作業者の安全を守る
- リスクアセスメントを行う
これらを実現するために、SDSの内容を正しく理解し活用することが大切です。

