こんにちは。今日は自分の学び直しも兼ねて、ELISA(酵素免疫測定法)の シグナル増幅の仕組み、定量上限、様々なELISA法の使い分けについて整理しました。
実験は経験あるけど、原理が曖昧…そんな方にぴったりです。
シグナル増幅の主役は二次抗体とビオチン‐アビジン
そもそもELISAでしばしば使われる「シグナルが増強される」というのは、ELISAでは 酵素が基質と反応して発色する量が増えること を指しています。言い換えると 「より強く発色する」 ということです。
ELISAでシグナルが強くなる理由は、二次抗体とビオチン‐アビジン結合にあります。
- まず、抗原に一次抗体が結合します。
- この一次抗体には複数のエピトープ(二次抗体が結合できる目印)が存在します。
- 二次抗体は一次抗体のFc部分(Y字の軸)に結合します。
- Fcは立体構造を持ち、複数のエピトープがあるため、一次抗体1本に複数の二次抗体が結合可能です。
- ビオチン‐アビジン結合
- ビオチン修飾された二次抗体にアビジンが結合します。
- アビジンは4量体で、最大4個のビオチンに結合できます。
- アビジン1個には酵素が1つ結合しており、この酵素が発色のもとになります。
- 結果として、アビジンが多くのビオチンに結合するほど発色が強くなり、シグナルが増幅される仕組みです。
このアビジン‐ビオチン結合は非常に強固で、ELISAの安定した増幅に欠かせない役割を果たしています。
ビオチン‐アビジン結合とは?
ELISAでのシグナル増幅には、二次抗体に結合したビオチンとアビジン酵素の強固な結合が欠かせません。ここで、ビオチン‐アビジン結合について整理しておきましょう。
基本
- ビオチン:ビタミンB7の一種で、とても小さな分子
- アビジン:鳥の卵白に含まれるタンパク質
特徴
- 結合力が非常に強く、非共有結合(通常の水素結合や疎水相互作用)でありながらほとんど切れません。
- 結合はほぼ不可逆で、洗浄や反応条件にも耐えるため、ELISAなどの検出に非常に適しています。
仕組みのイメージ
- ビオチンを「鍵穴」、アビジンを「鍵」と考えると、鍵がぴったりはまった状態が非常に安定しているイメージです。
- この安定性のおかげで、二次抗体に付けたビオチンにアビジン酵素を結合させても、シグナルを失わずに測定できます。
💡 補足:順番を覚えるコツ
- ビオチン(B)にアビジン(A)が結合する → B → A で覚えると自然です。
キットや文献でも、ビオチン修飾抗体にアビジン酵素が結合する、という表現が多いです。
サンドイッチELISAと定量上限の関係
サンドイッチ法は 微量の大きなタンパク質 向きです。
- 原理:キャプチャー抗体が抗原を捕まえ、別の検出抗体が別のエピトープに結合
- ポイント:抗原には最低2つのエピトープが必要
- 注意:低分子(小さいホルモンや薬物)は、巨大な抗体が2本同時に結合できないのでサンドイッチ不可
ここで気づいたのは…
Fcに結合できる二次抗体の量には限界がある → これが定量上限値や反応上限値になる
💡 ボルダリングの例えで言うと:
- 「岩に手をかけられる場所は限られる」 → Fcに結合できる二次抗体の上限
- 「手をたくさんかければ落ちにくい」 → ビオチン‐アビジンでシグナル増幅
- でも「岩が小さくて手が置けるのはここまで」 → 結合できる一次抗体の量が上限
低分子を測る競合法とは?
競合法ELISAの仕組み(低分子抗原向き)
競合法は、低分子(ハプテン)を測定するのに適しています。
対象例:薬物、ホルモン、ステロイド、毒素など。
サンドイッチ法との大きな違い
- プレートに固定するのは 抗原 です(サンドイッチ法では抗体)
手順のイメージ
- プレート上の抗原に抗体を添加
- 同時に試料中の抗原も投入
すると…
- 抗体は「プレート上の抗原に結合するか」「試料中の抗原に結合するか」で競争します
- 試料中の抗原が多いほど、抗体はプレートに結合できなくなる
- その結果、シグナルが弱くなる(逆相関)
💡 ポイント:サンドイッチ法とは真逆の発想で、低分子でも測定可能です。
なぜ、競争させることが必要なのか?
競合法で「競争させる」理由は、低分子抗原(ハプテン)の場合、サンドイッチ法が使えないからです。
ポイントを整理すると:
- 低分子は小さすぎる
- サンドイッチ法では抗原に「キャプチャー抗体」と「検出抗体」の2本が同時に結合する必要があります。
- 低分子はサイズが小さく、2本の抗体が同時に物理的に結合できません。
- 井の字ブロックでビー玉を挟もうとするようなものです…。
- 競争させる発想
- 「挟めないなら取り合いさせよう」
- プレート上の抗原と試料中の抗原が同じ抗体を奪い合うことで、間接的に試料中の抗原量を測定できます。
- 測定原理
- 抗体がプレート上の抗原にどれだけ結合できるかで、試料中の抗原量を逆算する
- つまり、試料中の抗原が多い → プレートに結合する抗体が少ない → シグナルが弱くなる
💡 まとめると
競争させることで、低分子でも抗原抗体反応を利用して測定可能にしている、ということです。
直接・間接ELISAの違い
直接ELISAと間接ELISA
- 直接ELISA(Direct ELISA):抗原に直接酵素標識抗体を結合させ、基質と反応させて発色を観察する方法
- シンプルで手順が少ない
- 感度は低め、高濃度抗原向き
- 間接ELISA(Indirect ELISA):抗原に一次抗体を結合させ、一次抗体に対して酵素標識二次抗体を結合させる方法
- 二次抗体でシグナルを増幅可能なため感度が確保できる
- 抗体測定向きで汎用性が高い
- 二次抗体を共通で使えるためコスパが良い
| 方法 | プレート固定 | 測定対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 直接 | 抗原 | 抗原 | シンプル、感度低い 高濃度向き |
| 間接 | 抗原 | 抗体 | 二次抗体で増幅可 抗体測定向き |
タンパク質サイズの目安(ミニコラム:Daとは?)
まず質問です。
原子1個の重さって、グラムで表せますか? 🤔
水素原子1個の重さは、約 1.67 × 10⁻²⁴ g。
…小さすぎますよね?笑
だから生まれた単位が👉 ダルトン(Da)
Da(ダルトン) は分子量の単位です。
Daの定義
1Da=炭素12原子の質量の1/12
1 Da = 水素原子1個の質量に近い
タンパク質や小分子の重さを表すときに使います。
アミノ酸1個の分子量は≒110KDa(アミノ酸は炭素・窒素・酸素・水素からできています)
つまりアミノ酸が100個つながったたんぱく質は、100個 × 100 Da = 10,000Da=10KDaになります。
- 下記は様々な分子のサイズ感です。
| 分子の種類 | 分子量 |
|---|---|
| 低分子(薬物・ホルモン) | 100〜500 Da |
| 小さめタンパク質 | 約10 kDa |
| アルブミン | 約66 kDa |
| IgG抗体 | 約150 kDa |
💡 イメージ:
- 100 Da → 小さなビー玉
- 10 kDa → 野球ボール
- 150 kDa → バスケットボール
この目安を覚えておくと、どの抗原法を使うか迷わず判断できます。
そして、サンドイッチ法は大きなタンパク質向き、競合法は低分子向き、間接法は抗体向き、と覚えておくと便利です。
今日のまとめ
- シグナル増幅の主役は 二次抗体+ビオチン‐アビジン
- サンドイッチ法 → 微量タンパク質向き
- 競合法 → 低分子抗原向き
- 間接法 → 抗体測定向き
- 直接ELISA → 高濃度抗原や簡易確認向き
| 方法 | プレート固定 | 測定対象 |
|---|---|---|
| 直接 | 抗原 | 抗原 |
| 間接 | 抗原 | 抗体 |
| サンドイッチ | 抗体 | 抗原 |
| 競合 | 抗原(or抗体) | 主に低分子抗原 |
今回の整理を通して、ELISAの原理やシグナル増幅の仕組み、定量上限の意味まで理解できました。これまでサンドイッチ法しか経験がありませんでしたが、薬物やホルモンなど、さまざまな検査でELISAが活用されていることも分かり、幅広い応用をイメージできるようになりました。
