実験メモ:QIAGENのプラントDNA抽出キットを使ってみて

分析屋まゆたろうの実験ノート

QIAGENのプラント用キットについて

QIAGEN(キアゲン)は、植物や菌類サンプルから核酸を抽出するための研究用キットをいくつか提供しています。

代表的なものに、

  • RNeasy Plant Mini Kit:植物組織から高品質のRNAを抽出できるキット
  • DNeasy Plant Mini Kit:植物試料からDNAを抽出できるキット

があります。

RNA抽出キット(RNeasy)では、主に「トランスクリプトーム解析(遺伝子発現解析)※」に使うためのRNAを効率よく回収できます。

※トランスクリプトーム解析は、RNAを抽出して「遺伝子がどのように働いているか(発現しているか)」を調べる研究に使われます。

一方、DNA抽出キット(DNeasy)は、「遺伝子型解析やPCR解析」に使える安定なDNAを回収するのに適しています。

今回はこのうち、DNeasy Plant Mini Kit を実際に使用し、その原理や重要なポイントを整理しました。


今日のテーマ:DNeasy Plant Mini Kit

このキットは、植物細胞から高品質なDNAを効率よく精製するための製品です。

植物細胞は動物細胞とは異なり、細胞壁 と呼ばれる分厚い構造に守られています。
そのため、DNAを取り出すのは容易ではありません。
木の幹を想像していただくと分かりやすいのですが、硬くてしっかりした壁を壊して中身を取り出すイメージです。

ここからは、抽出工程の中で特に重要だと感じたポイントをまとめます。


1. APバッファーの役割

植物細胞は壊れにくいのですが、APバッファー を用いることで細胞を溶解し、DNAを効率よく遊離させることができます。
このとき含まれるカオトロピック塩などの成分は、核酸分解酵素の働きを阻害し、DNAが分解されるのを防ぎます。


2. RNaseAの役割

DNA抽出の過程ではRNAも同時に溶け出してきます。
そこで RNaseA を添加すると、RNAのみを分解できるため、最終的にDNAの純度(きれいなDNAが取れる)が向上します。
この処理は、PCRやシーケンスなどその先の実験や解析の精度を高めるうえで重要です。


3. DNAとRNAの違い(おさらい)

項目DNARNA
塩基A・T・C・GA・U・C・G
デオキシリボースリボース
構造二重らせん一本鎖(部分的に二次構造を形成)
役割遺伝情報を長期保存情報伝達・翻訳・機能分子として作用

DNAは「設計図そのもの」、RNAは「そのコピーを現場に持って行く担当者」と考えると理解しやすいです。


感想

植物由来のDNA抽出は、細胞壁や二次代謝産物の影響で難しいとされています。

植物由来のDNA抽出においてよく言われる 「二次代謝産物(secondary metabolites)」 とは、植物が生きるための必須成分(一次代謝:糖・アミノ酸・脂質など)ではなく、環境適応や防御のために合成する化合物を指します。
しかし、キアゲンのキットを利用することで再現性が高く、シンプルな操作でDNAを回収できる点に大きなメリットを感じました。

しかもこのキットはクロロホルムなどの有害な物質を使用せずにDNAを抽出できます。

今回の実験を通して、溶解工程の重要性RNA除去の意義 を改めて実感しました。



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